僕は今、屋久島にいる。
なぜこんなところにいるのか?
僕はフラれた。
女にフラれた。
一人になった。
誰もいない部屋に帰りたくなかった。
そうして手に入れたのがこちら。
カエリたい気持ちを込めて・・・・
今思えばなんで買ったんだ?
カエルスーツ。
僕は何もかもが嫌になっていた。
仕事以外別に何もない。もはや仕事も必要ないのではないか?とすら思う。
「新しい自分を探そう!」
そう思って何か「他の自分になりたい」と買ったのではないだろうか。
うん。そんな気がする。きっとそんな気がするよ。
そんな気がしてたようなしてなかったような。
そうして私は新しい自分を見つけるため、
カエルのスーツに身を預けた。
「・・・・・・・・」
おっさんがカエルのスーツを着て人生について考えた。
「新しい自分」
「これからの生き方」
「・・・・・・・」
僕は何か間違っていることに気づいた。
こんなことをしても何も変わりはしない。
場所が悪いんだ。
いつもの部屋。いつもの空間に、いつもとちょっと違うおセンチな自分程度の空間では新しい自分なんて見つけられはしない。
そうして僕は自分自身をみつめなおす、新しい自分を探しに旅に出ました。
私の自宅から12時間ほどで、
屋久島へやってきた。
「今、屋久島にいます」って会社のみんなにメールしたらみんなから罵倒された。
「何やってんの?」「自殺するの?」
なんてヒドイ会社の奴らなのだ。
なんとでも言え!
毎日毎日同じ道を歩いていったりきたり、頭を下げたり、
毎日毎日研修をしてたって、どうせみんな辞める。ハイまた一から研修。
こっちが聞きたいよ何やってんの?
企業理念も経営方針もわかる。
でもなんか・・・いいの?
ずっとそればっかりな気がしないのかな?
1日の5分の4ぐらい仕事場だよ。帰って寝るだけだよ。
唯一の光が・・・・彼女・・・・彼女だった・・・・
え?女は星の数ほどいるって?
バカヤロー!
太陽は一つしかねぇーんだよ !
人生を消耗してるような気がしてならなくなった。
イケダハヤあんまりよく知らないけど
一人になったら急に思った。
一人・・・・あ、悲しい
今日から私は違う。
旅に出るんだ。
世界はもっと広いと思う。
広いと思うんだ。
もっと自分と向き合ってもいいと思うんだ。
そうした私は今、
縄文杉へ向かって歩いている。
知らなかったんだ 。
自動販売機も、ごはんを食べるところもないなんて。
昨日の夜から何も食べていない。
観光地じゃないのか?
線路の上 をひたすら歩くのが縄文杉へ行くルートなんだ。
線路・・・
そう。いうのまにか社会という線路に僕は乗っていたのかもしれない。
そんなナーバスな私の気持ちに追い打ちをかけるほど線路の道は長い
線路の一本道、両サイドは崖だ。
まさに会社に属する社畜となった私にぴったりの道だ。
やめろ。もうやめてくれ。これ以上何を私から奪うというのか会社よ。
通りやすいように木の板が設置されている。
騙されないぞ。そうやって「これもみんな君のため」なんて言葉は全部嘘だ。
上司の仕事は上司がすればいいじゃないか。
なんでこっちにやらせたうえに「やらせてあげてるんだよ」なるんだ。
どんな計算式なんだ。こんな道に私は騙されない。
そうお思い、私はただひたすら道を進んだ。
ウィルソン杉とかそういうのがあるらしい。
おなかもすいてきた。
縄文杉は10時間かかるらしい。
歩いている間に様々なことを考える。
杉の中に入る。
暗い。
覆いかぶさる闇。
そう、社会は闇だ。
労働基準法っていったいなんなんだ。
過労死なんて言葉があるのは日本くらいではないのだろうか?
なんのために仕事をするのか、
なんのために生きているのか?
ここはどこ?
あれ?私はダレ
疲労感が半端ない。
今度は上りが続く。
この旅路の間に・・・・様々な人と私は出会った。
中国人の人、日本を一周回っているひと、大阪で働く人、東京で働く人。
いろんな人が縄文杉に向かって歩いている
いつの間にか私の周りには、
一人、
二人と増えていった。
明るくなるにつれて疲労と空腹が限界に。
恥を忍んで
「すいません。誰か食べ物くれませんか?」
人生においてこんな言葉を発したのは初めてだし、
食べ物くださいなんて実際にも聞いたことも見たこともないし、テレビのドラマでもそうそうない。
それほど私はピークだった。
言ってよかった。
快くパンをくれた。
本当にうれしい。
普段の社会にいてれば、こんな話はないし、もし同じ同僚に話せばきっとバカにされるだろう。
生きてる・・・
あぁ・・これが生きているか・・・・?
なんと素晴らしい世界なのか?
一体普段はどんな世界に私たちは生きているのだろうか?
そうこうしているうちについに・・
ついに・・・
ついに目的地にたどり着いた。
縄文杉だ!!
うぉぉぉぉー!!
ウォォォォォォオオオオオー!!!
みんなで喜び合った!!
抱き合ったし、なかなかきつい道中だったんだ。
すごい・・・
なんて壮大なんでしょうか??
なんてすごい空気なんでしょうか?
神聖さを感じます。
深い森の奥の奥にたたずむ1000年の木。(あってる?)
片道5時間かかった。
足も腰もガクガクだ。
もう頭の中も真っ白というか、何も考えられない。
やったぁぁっぁー!!
やったぞぉぉぉぉぉおおおおおーーーー!!
ついにやったんだぞぉぉぉーーーー!!
わぁぁぁーー!!って僕たちは盛り上がった!!
疲れも吹っ飛ぶ勢いだ!
それほどうれしかったんだ!!
「あ!」
私は思い出した。
カエルスーツで人生を思い返すんだって!!
よーしよーし!!
着替えるぞぉー!
わぁっぁあーー!!
(みんなの喜び合う声が)
わぁぁ?
ぁぁあ?
(疑問の声に)
え?
あれ?
なに?
その時、今まで喜び合っていた旅の仲間の目線が異様に冷たく、
「あ、そういう人なんだ」っていうコメントが私の心に深く深く刻まれました。
新しい自分はこうではないと信じたい。
人生ってなんなんすかね?
ありがとうございました。
おわり
PS・カエルスーツはその時セット販売だったので、僕の旅は続きました。
北アルプスを横断しました。
隠岐の島で馬に追い回されました。
その旅路の話は・・・また
ここまで読んでいただいた方へ。
ありがとうございました。(いろんな意味で)
それどこ大賞「買い物」