「父さんの様子がおかしいの」
そんな電話がとある夜にかかってきた。
一体どういうことなのか?うちの父はもう80歳手前。いろいろあった。
実家には先の欠けた包丁があったり、ボコボコにされた部屋があったり、我が家もいろいろ今まであったのだ。
そんな実家からの電話。
娘、息子の私たちもそれぞれが家庭を持っているので一緒に住んでいない。
高齢となった両親に一体なにがあったのか?
何度も離婚問題を直視してきた私としては何事もなければいいのだけど・・・
話を詳しく聞くと父は深夜に警備員の仕事をしているらしい。だいたい2日に一回夜勤で働いている。
動物の世話をする夜勤らしい。
高齢者になっても働かなくてはならないのだ。世知辛い。
そんな父が毎回「弁当の量を増やしてほしい」というのだとか。
夜勤の時間が長いため、お弁当だけではなく、途中におやつを食べたりしているらしい。
「弁当を分けて食べているのだろう。」そう母は思っていた。
しかし、どうも量が多いらしい。お弁当二つ分にお菓子。飲み物。
「誰かにあげているのか?」と聞くと
「自分で食べている」とのこと。
高齢になってご飯を食べすぎると良くないと考えた母はお弁当を多めに作るのをやめた。
すると父は自分で余分に弁当か何かしら食べ物を持っていくようになった。
これは・・・・・やはりおかしい。
必死にご飯を持っていくのだ。こっちが弁当作っているのに自分でも何か持ったいく。
怒ると、隠れて持っていく。隠してでも食べ物を持っていくのだ。
まさかまた浮気ではないか?やっぱり誰か他にいるんじゃ無いか?
そんな疑問を感じていたそうだ。
もしくはついにボケたか?
そんな疑問を感じながらも母は献身的に父を支え、弁当を作り、仕事場へ行く父を見送っていた。
定期的に実家に帰っては父の様子を聞いた。
「相変わらず何か持っていってる」
父に様子を聞いた。
「順調よ」
わからん。父は痩せることも太ることもなさそうで、元気もある。
父と母の関係は相変わらずだけど、それなりに老夫婦は楽しく生活しているようだった。
母から「父の様子がおかしい」という連絡が来て1年ほど経った。
そして実家に帰ると・・・・・・・・
猫がいてんだけど?
1年前からどうやら父は毎日毎晩猫に餌をあげてたらしく、ごはんが無かったら悲しい声で鳴くみたいで、自分で猫用のお弁当を作ってあげるくらい猫の呪いにかかったのかというぐらい餌あげてた。
そうして1年たった夏。
野生の猫はどこの馬の骨かしらいない奴の子供を孕ってしまったわけ。
そして産まれてしまった。
子猫たち。
さすがに1ネコが5ネコになったらまずいというところで、自宅で飼うことにしたそうだ。
ネコを持って帰ってきた父。
母に「猫飼いたくない?」っつって。
ネコもう車に乗せてんのに聞いてきて、
母「猫いらん」
父「猫いてるんだけど?」
母「猫どうすんの」
父「猫飼う」
母「誰が世話すんの?」
父「私が世話をする」
母「わかた」
こうして、実家に猫が誕生することとなったようだ。
母は猫の世話に追われているが、それはそれで幸せそうなので、よかったと思う息子なのであった。
おわり(猫の手術代を出せって言われてる今日この頃です